師匠がスーパーに

「ん?見覚えのある顔?」

スーパーに行くと、必ずお酒売り場を見てしまうのです。

職業柄。

で、ふと足が止まって、「ん?」となったわけです。

「えっ!師匠!」

スコッチウイスキーの『ティーチャーズ』のボトルに、師匠の早川 恵一マスターがいるではありませんか。

なんか、嬉しいですね。

自分の師匠が、こんなところで使われているなんて。


毎日、毎日

2002年から2012年までの十年間、Bar Leigh(バー・リー)の早川マスターのもとで、修行していました。

いやぁ、怖かった。

毎日毎日怒られてばっかりでした。

「アホ、ボケ、カス!」って。ぴえん。

私の出来の悪さが原因ですが。

まあ、正直、修行中は辛かったけど、毎日毎日やめたいと思っていたけど。

今、自分で店をして、「お客様からカクテルの味が美味しい。」「ドリンクを作っている時の所作がきれい。」「店の雰囲気やセンスがいい。などと、お褒めいただきますが、これらは厳しい修行時代あってこそだと思っています。

まさに、早川マスターは、私の先生ですね。


「先生」じゃない

そんな「先生」繋がりで、このウイスキーの名前について、ちょっと面白い話を。

「ティーチャーズ」という名前、英語で書くと Teacher’s

「あぁ、先生のウイスキーか」と思いますよね。

でも、違うんです。

これ、創業者の苗字なんです。

1830年、スコットランドのグラスゴーで、ウィリアム・ティーチャーという19歳の青年が、食料品店でウイスキーを売り始めたのが始まり。

Teacher’s=ティーチャーさんのウイスキー、ということです。

偶然にも「先生」という意味の名前を持つ人が作ったウイスキーが、私の師匠の写真を使っている。

なんか、出来すぎた話だと思いませんか。


妥協しない人が作ったウイスキー

ウィリアムは、ただウイスキーを売るだけの人ではありませんでした。

「本当に美味しいものを作りたい」と、自分でブレンドの研究を重ねていきます。

その結果生まれたのが、今も売られているティーチャーズ ハイランドクリームです。

ウイスキーには、大麦だけで作る「モルトウイスキー」と、とうもろこしなどの穀物で作る「グレーンウイスキー」があります。

この2種類を混ぜ合わせたものが「ブレンデッドウイスキー」で、ティーチャーズもそのひとつです。
 

ティーチャーズ・ハイランドクリームができるまで|モルトウイスキー(大麦)とグレーンウイスキー(とうもろこし)の2種類の樽をブレンドして造られるブレンデッドスコッチウイスキーの製造工程を図解したインフォグラフィック

一般的なブレンデッドウイスキーは、モルトの割合が全体の約30%ほど。

でもティーチャーズは45%以上

コクや香りの決め手となるモルトを、コスト度外視でたっぷり使っているわけです。

妥協しないところ、なんか早川マスターと重なります。


スモーキーな香りの秘密

ティーチャーズの特徴といえば、スモーキーな香りです。

焚き火や燻製を思わせる、独特の香ばしさ。

この香りは、ウイスキー造りに使うピート(泥炭)という燃料からきています。

大麦を乾燥させるときにピートを燃やすことで、麦にスモーキーな香りが染み込むんです。

ティーチャーズのスモーキーさの源は、スコットランド北東部にあるアードモア蒸溜所のウイスキー。
 

スコットランドのアードモア蒸溜所(Wm. Teacher & Sons Ltd.)外観イラスト|ティーチャーズ・ハイランドクリームのキーモルトを製造するハイランドの蒸溜所

この蒸溜所、実はティーチャーズのためだけに1898年に作られた専用の蒸溜所です。

自分のウイスキーのために蒸溜所を一から建ててしまうくらい、ウィリアムのこだわりは本物でした。


ボトルにも革命を起こしていた

もうひとつ、知っておくと面白い話。

今、ウイスキーのボトルにはコルクの上に丸い木の頭がついたキャップがよく使われていますよね。

コルク抜きを使わず、頭の部分をつまんでそのまま手で引き抜けるあれです。

実はこの仕組みを最初に考えたのがティーチャーズなんです。

1913年のことです。

当時のボトルはワインと同じ、コルクだけで栓をしていました。

ウイスキーを開けるにもコルク抜きが必要だったわけです。

それを「手だけで開けられるように」と、コルクの上に持ち手をつけ、引き抜きやすいよう先細りの形に改良した。
 

1913年にティーチャーズが発明したセルフオープニングボトルの比較イラスト|左:コルク抜きが必要だった従来のウイスキーボトル、右:T字型コルク栓を手で引き抜けるティーチャーズの革新的なボトル

ウイスキーをもっと気軽に楽しんでほしい、そんな気持ちが伝わってきます。


スーパーで買える本物のスコッチ

今のティーチャーズは、日本のサントリーが管理しているブランドです。

2014年にサントリーがアメリカの会社を買収した際、一緒に傘下に入りました。

そして気になる値段ですが、700mlで1,000円台

スーパーで普通に手に入ります。

200年以上の歴史、こだわりのモルト比率、自前の蒸溜所まで持つスコッチが、この値段というのは正直驚きます。


飲み方

難しく考えなくて大丈夫です。

炭酸水で割るハイボールが、一番飲みやすくておすすめ。

スモーキーな香りが炭酸でふわっと広がって、食事にもよく合います。

慣れてきたら、そのままストレートで飲んでみてください。

蜂蜜やリンゴのような甘さの奥に、ピートの香りがじんわり感じられます。


スーパーで師匠の顔を見かけたことから始まった話が、200年前のスコットランドまで繋がりました。

見かけたときは、ぜひ手に取ってみてください。

大阪天満のBAR ALBAにもティーチャーズ置いています。プロが作るシュワシュワハイボール。

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